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実績紹介

PROJECT CASE STUDY 014

低放射シートを用いた体育館屋根改修の温熱環境改善効果のシミュレーション

関連業務:012 冷房化を実施した体育館の暑熱対策(屋根散水・遮熱シート)の効果検証

業務の概要

体育館の屋根改修手法の比較評価

課題と背景

公立小中学校の体育館等における空調(冷房)設備の設置率は31.7%(令和8年5月1日現在)で、令和17年度の100%整備を目標に導入が進められています。
空調設備の整備に対する補助の要件には「断熱性の確保」が含まれていますが、確保すべき断熱性能の数値基準は示されておらず、既存建物の性能に応じて経済性に配慮した断熱化を行うこととされています。
そのため、改修手法ごとの効果を定量的に把握することが求められています。
一方、学校施設は1976~1990年に集中的に建設されており、屋根の耐荷重に余裕がない建物も多いことから、重量を伴う屋根改修は適用が限られます。

業務の目的

そこで、上下温度分布を考慮できる熱負荷計算プログラムDAIKUKANによる年間シミュレーションを行い、各種屋根改修の温熱環境改善効果と熱負荷削減効果を比較しました。
ここでは、軽量で耐荷重の制約下でも施工できる「低放射シート」を中心に、その有効性を検証した結果を紹介します。
なお、実際の体育館で屋根散水・遮熱シートの効果を実測により検証した事例は、「冷房化を実施した体育館の暑熱対策(屋根散水・遮熱シート)の効果検証」(CASE STUDY 012)で紹介しています。

主な調査内容

調査内容1:シミュレーション条件と検討ケース

アリーナ部30m×21m(630m²)、天井高9.1mの体育館モデルを対象とし、室内空気を鉛直方向に10層に分割して上下温度分布を考慮しました。
気象データは拡張アメダスデータ2020年標準年(東京)、空調はキャットウォーク下部に設置したヒートポンプエアコン8台(合計風量35,000m³/h、CAV)とし、平日のみ203日、授業(8:00~15:00)と学校開放(18:00~21:00)の使用条件で計算しています。
屋根改修は、改修前(無断熱の瓦棒葺き)に対して「低放射シート」「付加断熱」「高反射塗料」「太陽光発電」の4ケースを設定し、屋根以外の仕様は変更していません。
低放射シートは、既存屋根の室内側に中空層を設けて両面の放射率0.03のシートを施工するもので、中空層および室内側の放射熱伝達が抑制されます。

低放射シートの構成
低放射シートの構成(既存屋根の屋内側に中空層を設けて施工)
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リフト上で施工可能

低放射シートは軽量でリフト上での施工が可能
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調査内容2:夏季の温熱環境

夏季代表日(7月13・14日)の日中の作用温度の改善効果は、低放射シート、高反射塗料、付加断熱、太陽光発電の順に大きく、顕熱負荷の削減も同じ順となりました。
低放射シートでは、改修前と比べてMRT(平均放射温度)が5℃以上低下しています。


夏季代表日の作用温度・MRT・顕熱負荷
夏季代表日(7/13・14)の作用温度・MRT(左、実線:作用温度/破線:MRT)と顕熱負荷(右、冷房を負)
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垂直温度分布をみると、低放射シートは空調吸込口高さ(FL+3.5m)より上の領域でかえって温度が高くなっています。
天井の表面温度そのものは下がらないものの、低放射率化により人体への放射熱伝達が抑制されるため、上部の空気温度が高くても居住域の作用温度は改善されるという結果です。


夏季代表時刻の垂直温度分布
夏季代表時刻(7/14 13:00)の垂直温度分布(灰色の水平線は空調吸込口高さ FL+3.5m)
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調査内容3:冬季の温熱環境

冬季代表日(1月16・17日)では、日中・夜間ともに付加断熱の改善効果が最も大きくなりました。
低放射シートは夜間の天井表面温度が高くなるものの、放射率が低く人体のMRTへの寄与が小さいため、作用温度の改善にはつながっていません。
いずれのケースも、夏季に比べると改善幅は小さくなっています。


冬季代表日の作用温度・MRT・顕熱負荷
冬季代表日(1/16・17)の作用温度・MRT(左、実線:作用温度/破線:MRT)と顕熱負荷(右、暖房を正)
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冬季代表時刻の垂直温度分布
冬季代表時刻(1/16 20:00)の垂直温度分布(灰色の水平線は空調吸込口高さ FL+3.5m)
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調査内容4:年間冷暖房負荷

年間の冷暖房合計負荷(全熱)は、改修前の153GJ/年に対し、低放射シートが120GJ/年、付加断熱が121GJ/年となり、いずれも2割程度の削減効果が得られました。
一方、高反射塗料は冷房負荷の削減量が最も大きいものの、冬季の日射取得が減って暖房負荷が増えるため、合計では168GJ/年と改修前を上回る結果となりました。


年間冷暖房負荷(全熱)
年間冷暖房負荷(全熱)
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夏季の温熱環境改善には低放射シートが、冬季には付加断熱が有効であり、年間の冷暖房負荷では両者がほぼ同等の削減効果を示しました。低放射シートは軽量で、リフト上での施工が可能なことから、耐荷重に制約のある既存体育館にも適用できる改修手法として有効といえます。
なお、本検討は東京を対象とした計算であり、今後は実測データの収集とシミュレーション結果との照合を通じて、体育館屋根改修の効果に関する知見を体系的に積み上げていく予定です。

報告書・資料

調査成果の詳細資料

関連論文

低放射シートを用いた体育館屋根改修の温熱環境改善効果に関するシミュレーション

著者:佐藤誠、藤原隆博、寺澤康仁、加賀谷仁、三坂育正
発表年月:2026年9月
掲載誌:日本建築学会大会学術講演梗概集

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